くじけそうなときに


中学コース下村です。
今年最後の担当の日は、週末に読んだ本について。
佐賀のがばいばあちゃん』(島田洋七 著)、かなり売れているようですから、読んだ人は多いのではないでしょうか。


ここ2週間ほどで2人の人からすすめられ、説明してくれたエピソードにつられて読んでしまいました。
「B&B」というお笑いコンビの島田洋七が、小学生から中学生にかけて、広島の母親の元を離れ、佐賀のおばあちゃんに引き取られて一緒に生活していたときのお話です。食うものにも困るような生活なのに、悲しくならないのは、おばあちゃんの人柄のおかげ。おばあちゃんはつわものなのです。


お腹をすかせて学校から帰ってきて、「お腹すいた」と言ったら「もう寝ろ」と四時半なのに寝かされて、夜中に「お腹すいた」と目が覚めていったら「夢だ」と言われたり。


悪い通知表を見せられても、「足したら5になるから、いい」と言うし、「英語がわからない」と言えば「私は日本人です、って書いとけ」と言い、「漢字も苦手」と言うと「僕はひらがなとカタカナで生きています、って書いとけ」と答え、「歴史もわからない」というと「過去にはこだわりません、って書いとけ」と言ったとか。


おばあちゃんは、孫を、くよくよさせない名人でした。夫を亡くし、女手一つで七人の子どもを育て、またもや孫をひきとって、おばあちゃん自身とっても大変なことが多かったと思うのに、それを感じさせない強さを持っているのです。


いちばん印象に残ったのは、でも先生のことでした。運動会は、運動神経抜群の島田洋七の活躍の場だったけれど、お母さんは広島からは来てくれないし、おばあちゃんは自分がくると孫が恥ずかしい思いをすると思っているからか来ないしで、うめぼしとしょうがのお弁当を隠れるように食べているのですが、運動会のたびに、担任の先生が「お腹が痛いから、弁当を換えてくれ」と言いにくるのです。交換したお弁当はえびフライとかの豪華なお弁当でした。


毎年、運動会の日に先生がお腹をこわして、「変ばい?」とおばあちゃんに話すと、おばあちゃんに言われるのです。「それはわざとしてくれたとよ」と。それが本当の優しさ、だと。人に気づかれずにやることが本当の優しさだ、と。


文庫版の帯に、「笑ってないて、勇気をもらってください」とありました。いろいろあった1年で、最後のほうは低空飛行できていたけど、めげちゃいけない、そんな勇気をもらいました。年の瀬にいい本を読みました。1時間もかからないで読めちゃいます。くじけそうな日にはぜひ。