好きを貫く


キャリアの方向性を考える、平たく言うと「どんな仕事をやるか」を考える際には、以下の3つの基準を元にして希望業界や希望職種を決めるというのが、一般的なキャリアデザインの方法です。

  • その仕事は、あなたの好きなことか?
  • その仕事は、あなたの得意なことか?
  • その仕事は、社会(他人)の役に立つことか(必要とされていることか、感謝されることか)?


もし、あなたが、今の仕事が大好きで、他の人より上手にこなせるという自負や実績があり、かつ、あなたの仕事ぶりに対してお客さんが感謝してくれるようなものであれば、あなたはとても幸せなキャリアを掴めていると実感できるはずです。


なお、上記の条件のうち、3つめの「社会(他人)の役に立つ(必要とされている)」という条件を満たしている仕事には、お客さんが喜んで対価を払ってくれますから相応に儲かります。つまり、経済的に成立する仕事だということです。


そこで、「がんばれ社長!」という人気メルマガを発行している経営コンサルタントの武沢信行氏は、自分が「好きで、得意で、儲かる分野」のことを「偉大ゾーン」と呼んでいます。そして、武沢氏は、各人における偉大ゾーンがどこかを見極めその分野の日本一になれるようにがんばるべきだと主張しています。


私もまた、この3つの条件を満たす仕事を選択するという考え方には100%賛同します。


ただ、特に重要なのは、


「その仕事は、あなたの好きなことか?」


という条件だと思います。




こう言うと、「でもさぁ、ただ好きなだけで仕事を選んでも、食っていけるとは限らないよね」という反論をよく受けます。確かにそれはそうなのですが、そもそも、仕事自体が好きになれないと、どんなに儲かったとしても「幸せなキャリア」という実感は得にくいでしょう。儲かってうれしいのはおそらく最初だけで、好きでもない仕事をずっとやり続けることほど、自分の人生にとって無意味であり、つらいものはないはずです。


また、あらゆる分野で「高度な専門性」が要求されるようになった今、四六時中そのことばかりを考え、寝食を忘れて没入するくらいでないと、その道のプロとして認められないという現実があります。したがって、その仕事が好きでもなかったら、寝食を忘れて仕事に取り組むなんてできないわけです。


だからこそ、まず第一に「あなたにとって好きな仕事」が何かを見極める必要があります


「Web進化論」や「Web時代をゆく」の著者でシリコンバレー在住のコンサルタント梅田望夫氏は元エンジニアですが、エンジニアとしてのキャリアをあきらめたのは、周囲に、朝から晩までプログラムを書いたり、電子回路を設計することに没入できる人がいたからだそうです。梅田氏は、そうした人ほどエンジニアの仕事を愛せないし、仕事をそこまで愛している彼らには勝てないと思ったからエンジニアから足を洗ったのです。


梅田氏は、齋藤孝氏(明治大学教授)との対談の中で次のように述べています。

今は、道具(松尾注:PCやインターネットなどのこと)のおかげで、あらゆる職種で時間も場所も関係なく仕事に没入できる。それだけに、仕事において「好き」を貫かないとサバイバルは難しくなるでしょうね。


日経ビジネスアソシエ』2008年01月15日号


ちょっと楽観的かもしれませんが、当初は何が役に立つのかわからない、とても経済的に成立しそうもない変てこな分野や仕事でも、とことん取り組んで極めると、不思議と人が喜んでお金を払うだけの価値が生まれてくるものです。実際、夜景評論家や、ラーメン評論家として生計を立てている人がいることがその証明です。もちろん、そんな特殊な価値を認めてくれる人は限られているかもしれません。しかし、そうした限られた市場と結びつくことが、Web時代には比較的簡単に実現できるのです。


「好き」をとことん貫いてみませんか?


え?、自分は、どんな仕事が好きかわからない?


実は、その悩みがキャリアの最大の課題なんですよね。あなただけが悩んでるわけじゃありません。


次回は、その悩みの解決のヒントを書きたいと思います。お楽しみに!
(次回は2月7日、「Z会ブログ」上にて!)


(キャリア・アドバイザー 松尾順)