心の筋トレ理論


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。


先日、ある人材紹介会社が主催するキャリアセミナーで、パネルディスカッションのコーディネーターを務めさせていただきました。このパネルディスカッションに参加された、『日経ビジネスアソシエ』編集長、渋谷和宏氏のコメントの中で、深く記憶に残った言葉がひとつあります。それは、「傷ついたもの勝ち!」という一言です。



あなたも、仕事の上で何か痛い経験を一度や二度はしたことがあると思います。もちろん、実際、体のどこかに怪我をするという意味ではなくて、大失敗して落ち込んだり、苦しんだりして、精神的に傷つくことです。


そうした痛い経験の最中って、本当につらいですよね。でも、後で振り返って見た時、こうした「つらい経験」が、自分を成長させてくれたのだということに気付くことが多いのではないでしょうか。よく言われることですが、「成功よりも、失敗からのほうが学べることは多い」というのは真実だと思います。だから「傷ついたもの勝ち!」なんです。



さて、渋谷編集長が最も傷ついたのは、『日経ビジネス』等の雑誌記者を経て書籍の出版に携わった時期です。「売れる」と信じて出版した本の売れ行きがはかばかしくない時、担当した編集者は文字通り針のむしろの上にいるような気分を味わうそうです。社内ですれ違う上司や同僚の視線が痛い。「君の本、売れてないね」みたいに、からかう人もいました。このため、渋谷さんは胃がキリキリ痛むような思いをされたんじゃないかと思います。


おかげで、本を売るのがいかに大変なのかを渋谷さんは身を持って経験しました。この大変さは、それまで安定した読者がいる定期購読の専門誌担当でしたから、実感としてはわかっていなかったことでした。しかし、このつらい経験は、後に、20-30代向けの男性ビジネス誌日経ビジネスアソシエ』の発刊を成功に導く上で貴重な教訓となったのです。



実は、私も、「傷ついたもの勝ち!」と同じような考え方を持っています。それは、「心の筋トレ理論」です。毎度ながらの「なんちゃって理論」ですが(笑)、「心の筋トレ」という表現は、私以外にも使われている方がいらっしゃいますね。それぞれ独自の解釈で語られているようですが、私の解釈は正統派です。


ご存知の通り、筋肉トレーニングの目的は、筋肉量を増やすことですよね。そのためにバーベルやダンベルなどの重量負荷をかけるわけですが、その時、体の中では何が起きているかご存知ですか?実は、負荷をかけると筋肉は切れてしまうのです。つまり、筋肉トレーニングとは、実質的に筋肉を傷つけることです。でも、その後、その切れた筋肉が修復されると、傷つく前よりも一回り太い筋肉になっています。つまり、傷つけることによって筋肉は太く強くなっていくのです。


心も同じです。たとえ傷ついてもそこから回復した時、あなたの心は一回り図太くなっています。以前よりもへこたれない強い心です。だから、傷つくことを恐れる必要はありません。傷つくようなつらい体験は、心を強くするかけがえのない機会です。望んでつらい体験をせよとは言いませんが、「傷ついたもの勝ち!」と考えて、試練に立ち向かっていくのです。


なお、筋肉トレーニング同様、傷ついた状態から回復するためには休養が必要です。心が痛んだら、回復するための十分な休養を取りましょう。


(キャリア・アドバイザー 松尾順)