やっぱりこの時期は

ベートーヴェン交響曲第9番(通称:第九)でしょう。
オススメの演奏は、タワーレコードやHMVなど、いろんなCDショップで名演が紹介されていますので、私は来年生誕100周年を迎える「カラヤン研究家(自称)」として、所有する9種類のカラヤンの第九を紹介します(ハント氏の資料によると、カラヤンの第九音源は21種類もあるそうです。うち、現在入手可能なものは10種類くらいですかね)。

  • 1947年VPO/シュワルツコップ(S)ほか:★★★★☆

若き日のカラヤンの気力の充実した演奏。終結部の高揚感も、フルトヴェングラーを髣髴とさせるものがあります。音質は良くないですが、カラヤンの隠れた名盤といっていい完成度を誇ります

  • 1962年BPO/ヤノヴィッツ(S)ほか:★★★★★

当時のベストセラー。演奏は模範的で、当時のカラヤンが目指していた巨匠像というものが如実にあらわれています。BPOの能力がまだ完全でなかった時代ではありますが、とてもきっちりとした仕上がりになっています。録音もステレオになり、音場感が格段に向上。20万円もするハードガラス仕様のCD第一弾の音源にも採用された、エポックメーキングな存在です

  • 1963年BPO/ヤノヴィッツ(S)ほか:★★★☆☆

BPOレーベルからの発売です。ベルリンのフィルハーモニーホールの完成記念公演を収録したものです。ホール自体の音響にカラヤンが満足せず、実際にこのホールでレコーディングが行われるようになったのが、この10年後という事情もあり、この演奏の録音もあまりよくありません。1962年の方がいいかな…

  • 1968年BPO/ヤノヴィッツ(S)ほか:★★★☆☆

映像作品として観ることができます。演奏は、後期のスタイルへの移行期であり、前作1962年の解釈の完成度、後期の技術的・芸術的な完成度から比べると、少し劣ります。映像作品であれば、1977年の方が感銘度は高いです

  • 1975-77年BPO/トモワ=シントウ(S)ほか:★★★★☆

オーケストラ演奏の完成度でいえばこの演奏がピカイチ。肉体的に急速に衰えだす原因となった怪我をする前後の演奏であるだけに、カラヤン芸術の頂点とみてよいかもしれません。ただし、合唱が良くない。とても残念です。どんなにオーディオを良くしても、この合唱だけは良くならないんですよね…もったいない。ベルリンでのセッションで、合唱部分を録りきれずに、ウィーンでも収録したようですが、このあたりに原因があったりして…

  • 1977年BPO/トモワ=シントウ(S)ほか:★★★★★

ベルリンでのライヴを収録した映像作品。とにかくすごい。ケガから復帰して、多少足を引きずっているカラヤンですが、演奏はものすごい気迫です。合唱がベルリン・ドイツオペラ合唱団に変わり、多少よくなったかな。映像付で聴くのであればこれが一番です。ただし、数年後にカラヤンと揉めることになるテノールのルネ・コロが、終盤でトチリます。まあご愛嬌

  • 1979年BPO/トモワ=シントウ(S)ほか:★★☆☆☆

東京・普門館でのライヴ。オーケストラの演奏、ましてやレコーディングに適した場所ではないので、とにかく録音が悪い。演奏以前の問題で、オススメできません。日本に本格的なクラシックホールが出来はじめたのは、1980年代になってから。うーん、もったいない(数千人を収容できる普門館が選択されたのは、商業的な理由もあるようですが…)

  • 1983年BPO/ペリー(S)ほか:★★★★★

肉体的に衰えだし、同時にオーケストラの統率力にも衰えが見えだした時期で、「完璧なアンサンブル」は影をひそめましたが、芸術・演奏としての完成度はこれが一番でしょう。終結部に加速をしなくても、これだけの高揚感を出すことができる。これがカラヤンのやりたかったことなんだろうなぁ…録音もとてもよいので、オススメです

  • 1986年BPO/グベッリ(S)ほか:★★★★☆

カラヤン最後の第九録音。映像作品として残っています。見るからに老衰したカラヤン。演奏も「淡々と力強く」進みます。第一楽章の終結部で、ホルンが入りを間違えてしまいます。カラヤンの指示が不明瞭なのも一因ではと思います。愛聴盤には向かないとは思いますが、カラヤン芸術の総仕上げとして是非聴いていただきたい一枚です


(VPO:ウィーンフィルハーモニー管弦楽団BPO:ベルリンフィルハーモニ管弦楽団


みなさん、第九で良いお年を!


(ながの)