薬学部6年制時代の進路決定(3)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


■さて、薬剤師になるには、薬科大学や薬学部のある総合大学、いわゆる「薬系大学」を卒業し、薬剤師国家試験に合格し薬剤師免許を取得する必要があります。その薬系大学が今年2006年度から大きく変わっています。医学部同様、薬学部も6年制を導入したのです。薬剤師以外の薬学分野での人材を育成するため、4年制も残りますが、薬剤師国家試験の受験資格は、原則として6年制の卒業者に限ります。


■医学が日々進歩しているなか、残念ながら医療ミスもたびたび問題になります。医療ミスのほとんどに薬が関係してしまうことから、それらのミスをなくし、薬害の防止と薬の安全な使用にかかわる人材を育てるには、薬剤師の臨床教育を今以上に充実させる必要があるのです。知識・技術はもちろん、医療人としての倫理観も必要です。具体的には、病院実習を従来は2〜4週間だったのを24週間(約6カ月)に増やすなどということが検討されているのです。


■先日、「薬学部を卒業した人は、どんな活躍をされているのですか?」という質問をしてくださった方がいらっしゃいましたが、薬学部志望の方にとっては、6年制と4年制が並列する状態で進路を決めることになります。2017年度までは4年制卒業者に対しても「その後、薬学の修士課程を修了した者は、受験資格を得られる」とありますが、大学院入学が必須となるうえ、病院実習6カ月間も含まれますから、4年制卒業者にとって、薬剤師への道はかなりハードになると言わざるを得ません。


■医学部、歯学部の卒業者の8割が国家資格を得て、その資格で仕事をしていますが、薬学部の場合、薬剤師の国家資格を使って仕事をする人は5割程度だと言います。“薬剤師”以外の多様な進路があるため、薬剤師養成専門の6年制と、薬学系の基礎教育を中心とした教育を行う4年制は両方必要だということです。


具体的に“薬剤師”以外の進路先を考えてみると、製薬会社での研究開発担当者やMR(Medical Representative「医療情報提供者」といい、自社製品の品質、有効性、安全性を医療現場で働く医師や薬剤師に情報提供する役割のことです)、さらに化粧品会社や健康食品会社で製品の開発担当に携わったり研究をする人もいます。彼らの中には薬剤師の国家資格を持っている人もいれば、そうでない人もいるのです。


薬学部卒業者には、“薬剤師”として働く道、“薬剤師”の資格を武器に他分野で働く道、“薬剤師”の資格なしでも薬学の専門家として社会に貢献する道、がそれぞれあると考えていいでしょう。


〜続きは明日に〜