「職業としてのお医者さん」を考える(2)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター



「病院というものは本来、公のもの、街のものであるべき。
そこに個人名が入っているということに、僕は違和感を常に持っていました」


こう切り出して語ってくれたのは、先月インタビューした、泌尿器科医のK先生です。


K先生は、ある地方都市(仮にF市としましょう)の開業医院の先生。お父様もお母様もお医者様という、“医者の息子”、“二代目医師”です。
病院では泌尿器科のほかに、小児科・皮膚科の看板も掲げていましたが、今回、病院の名前をそれまでの「K医院」(Kとは、先生の名字。今は息子のK先生が院長です)から、「F泌尿器病院」と改めました。
その理由をうかがった時の答えが、上記のものです。


「泌尿器というと、“おしっこに悩んでいる”とか、“性器のことで悩んでいる”人が来る病院という、なんか、マイナーなイメージですよね。
行くのに抵抗感がある人というのも多いでしょうし、“老人の病院”というイメージが強いですし。
でも実際、尿路結石や膀胱炎などといった排尿障害は、生活習慣が大きく影響していて、高齢者だけでなく若い人もかかりうる症状。
腎臓や膀胱、前立腺のガンにかかる人も年々増えて来ており、病院に行くのに抵抗している間に、悪化してしまうこともあるのです」
と、話してくれました。


新しくできた病院は、受付ロビーが吹き抜けとなっており、明るく開放的。
外観も、「F泌尿器病院」という看板文字が爽やかなブルーで描かれており、湿っぽいマイナーなイメージはどこにもありません。


K先生は言います。


泌尿器科が関わる分野は、いわば人間の尊厳にも関係するし、人の深いところにまで入り込んでいきます。
だからこそ、僕は泌尿器科にかかる人の抵抗感をなくしたかった。
この病院で5〜10年後、F市で暮らす人の泌尿器科に対するイメージを、変えてみせますよ」


あえて、“泌尿器”と全面に出すことで、街に住む人々の病院に対するイメージを変える。
そのことで、病気の予防・治療を進めて行きたいとK先生は考えています。


新しい病院は、K先生が建てたK先生の“城”と私は考えていましたが、同時に病院は“医師”側のものだけではなく、“患者”側のものでもあることに、改めて気づいたのです。


患者として、医師に「きちんと仕事してもらう」ためには、まずは自分側の偏見や妬み、コンプレックスなどを払拭することから、始める必要もあるのかもしれません。


〜続きは、18日(土)に!〜