首都圏で、地方で働くリアルとは(2)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


さて、「東北で出会ったクリエイター」としてまず紹介したいのが、カメラマン(男性)です!


彼は(仮にIさんとしましょう)年の頃、50歳前後といったところでしょうか。「最近娘が結婚したんだよ」という人ですから、もしかしてもっと年上の方かもしれません。


仙台在住ですが、取材で東北各地を訪れることも多いらしく、今回取材した土地にも何度か訪れたことがあるとのこと。
「ここに来たら、やっぱりラーメン食べなきゃね」など、地方の特産をいろいろと教えてくれました。


「普段、どんなお仕事されているのですか?」と聞くと、なんと驚いたことに、「俺、農家なんだよね。普段は農業やってます」と言うのです!


へぇ〜!と驚く私に(何を隠そう、私は昔、農家の嫁になりたかったくらいなのだ。実は今でも職業=農業というのに、とおっても憧れている)、Iさんは
「実は親が亡くなったので、その土地を耕やしているだけ。
自分のところで食べるお米や野菜を作っているという程度なんだけど。

でも今でも大きなトマトが実をつけているよ」
と豪快に笑うのです(注:これは11月の話です)


Iさんはご実家が農家で、ご両親は農業を営まれていたとのこと。
でも、息子である自分は「農業より、もっとクリエイティブでカッコいい仕事がしたい!」とカメラの勉強へ。
今では、雑誌や広告の撮影の他に、カルチャー教室などで一般の人にカメラを教える講師としてもご活躍とのこと。
文字通り、カメラのプロであります。


そんなIさんも、最近、
「やっぱこの年になると、土をいじりたくなるんだよ」という心境の変化もあって、ご両親の土地で農業を再開されたとのことです。
「でも、自分でつくったものを出荷してそれで生計を立てるなんて、とても無理。農業ってそんなに簡単にはできないんだよ。そのことがよく分かった。自分は、自分のところで食べる作物を作ったり、あとは定年後、農業をやってみたい、再開したいという人に土地を貸している。カメラマンを続けているのも、現金収入はやっぱり必要だからね(笑)」


この話を聞いて、「なんて豊かで理想的なあり方なんだろう!」と私は思ったのです。
若い頃は、自分の可能性を信じて、両親の歩んで来た道とは別な道にチャレンジし、
そこで一旦成功した後、両親の築いてきたものを、自分のキャリアにプラスさせる。
それも、ある意味、「横道にそれる」といった表現がふさわしい道を。
でも、その道はかつて自分の両親が歩んできた道。
それを、自分はまっすぐに歩めないけれど、その道の魅力的なところや、険しく大変なことも、若い頃よりずっと分かっている。


こんな風に、自分の仕事と両親の仕事を受け止められるようになるのは、一つの理想ではないでしょうか。


今、両親の仕事を継ごうかどうしようか迷っている人も、その仕事をいつ、どんな形で継ごうがあるいは、継ぐまいが、「自分にも、こんな未来が待っているはずだ」と思って、自分の今、興味あることを選ぶ勇気を、持ってほしいと思っています。


自営業であろうが、サラリーマンであろうが、公務員であろうが、クリエイターであろうが。
もしかして、ご両親の職業というのは将来、自分の職業魂の核となる、大切なモノなのかもしれません。


〜続きは、16日(土)に!〜