おらが町のオーケストラの「復活」2


北海道に存在する唯一のプロ・オーケストラである、札幌交響楽団(札響)が
復活を高らかに宣言する500回記念の定期公演


演奏ですが、技術的な完成度が高いとはいえませんでした。
タテのアンサンブルや、ヨコの表現力で感動するようなことはありませんでした。


歴史的に語られる、フルトヴェングラーバイロイトでのベートーヴェン交響曲第9番や、
超人的な完成度を誇るカラヤンのベルリンでのマーラー交響曲第9番のような、
人々の記憶と歴史に残るようなものではありません。おそらく会場にいた約2,000名の聴衆も、
しばらくすれば忘れてしまうような演奏でしょう。


でも、そうではない何かがありました。
たぶん、雰囲気だと思います。
難曲に必死に取り組むオーケストラ…その姿は難局を必死に取り組む姿に重なり、
それを温かく応援している聴衆と、温もりのあるkitaraのホールトーンも相俟って、
オーケストラからの一生懸命な直接音を、観客席からの温かい間接音が包んでいるようでした。


そう、まさに今行われている高校野球で、母校を応援するような雰囲気です。


実際、北海道で「プロの演奏」を聴ける機会は非常に少ないです。
北海道で「プロによるマーラー復活」を聴けたのは、何年もさかのぼらなくてはさらないと思いますし、
今後、いつ聴くことができるかも分かりません。
だから、多くの人は、「復活を演奏する札響」ではなく「札響が演奏する復活」を聴きに来ているのです。


東京や大阪のように、いろんな団体の演奏を聴き比べることなんてできません。
「うまいなぁ〜」と思う人もいれば、「相変わらず下手だなぁ」と思う人もいるでしょう。
いろいろな水準の耳を持った人が、「久しぶりの復活」を求めて一堂に会しているのです。


「やっぱり今回もダメだったかぁ」
「でもまた次回だな」


オラが町のオーケストラの復活は、かつて聴いたことがないほどの大喝采を受けていました。
ただそれは、サントリーホールでの大喝采よりも少し柔らかい気がしました。


おわり


(ながの)