あきらめてもいい、投げ出さなければ


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。


先日のNHKトップランナー」、海洋冒険家の白石康次郎さんが出演された回はご覧になりましたか?


白石さんは、約8ヶ月も続くヨットでの単独世界一周レース「5OCEANS(ファイブオーシャンズ)」(2006年10月−2007年5月開催)で、アジア人として始めて総合2位の快挙を達成しています。平穏無事、逆に言えば、あまりダイナミックな変化のない毎日を過ごしている私にとって、何ヶ月も海の上で一人ぼっちで過ごし時に荒れ狂う海に立ち向かう、死と隣り合わせの冒険に挑む白石さんの話はとても刺激的でした。



さて、白石さんは1967年、鎌倉に生まれ海を身近に育ちました。そして、水産高校を卒業後、第1回単独世界一周レース(BOCレース)で優勝した故多田雄幸氏に弟子入りし、海洋冒険家としての道を歩み始めます。1986年のことでした。多田氏は1989年に開催された第3回のBOCレースを最後に引退する予定で、彼自身が設計したヨットは白石氏に譲るといってくれていたそうです。ところが、白石さんもサポートしていたこのレース中、多田氏は寄航先のシドニーで死去。白石氏は恩師を失います。


しかし、白石さんは、多田氏の残したボロボロになった船を修復して「SPIRIT OF YUKOH」と名づけ、その船に乗って単独無寄航世界一周を目指すことにしたのです。結局、この目標が達成できたのは1993年、26歳の時でした。


実は、白石さんはそれまでに2度も失敗をしています。多くの方の支援を受けつつ、勇躍出航したにも関わらず、どちらも船の故障などのトラブルに見舞われ、1週間かそこらで早々と冒険を断念せざるを得なくなったのです。白石さんは、冒険を途中で断念する様子を自らビデオに記録していましたが、最初の失敗では無念の涙を流し、2度目にはもう涙もでないほどの落ち込みようでした。


でも、白石さんは、決して目標を「投げ出す」ことはしなかったのです。だからこそ、3度目の正直で見事に成功することができたわけです。番組の中で白石さんは、「あきらめてもいい」と言っていました。「あきらめる」とは、「明らかに見極めること」なのだそうです。目標を目指して進む途中で、しばしば予期せぬトラブルなどでこれ以上行けない、行くべきでないという状況になったとき、潔く撤退を決める。まさに「名誉の撤退」と言えるでしょう。もちろん、十分な準備をしてから再び出発する。大切なことは「目標」や「夢」を投げ出さないことなのです。



「あきらめてもいい」でも「投げ出さないこと」


と言うのは、冒険に限らず人生の真理のひとつだと私は思いました。「あきらめる」というのは、要するに自分のこれまでのやり方が間違っていたと素直に失敗を認めることです。負けを認めることで、これまでのやり方に固執することなく、新たなやり方を模索できます。目標や夢を投げ出さない限り、あきらめる回数が増えるほど、それは目標に近づいているのかもしれません。


ちょっと前に「くじが当たるまで引いた人が成功者」というテーマの内容も書きましたが、たまにはやる気を失い立ち止まることがあってもいい。うまく行かない時にへたに無理をするよりは、しっかり休んで英気を養ったほうがいいのだと思います。でも、あなたの「目標」や「夢」だけはどうか投げ出さないでくださいね。


(キャリア・アドバイザー 松尾順)