薬学部6年制時代の進路決定(2)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜
【執筆】小谷祐子(フリーライター


昨日の日記の続きです。


■とくに、4)のような薬局は「かかりつけ薬局」といい、薬剤師にとっては地域の人々の健康を「薬」という面から総合的に把握ことができます。医療の担い手としての活躍が期待される薬剤師のめざす姿がここにあると言っていいでしょう。


■薬剤師の働く場として、薬局以外にすぐ思い浮かぶのが病院でしょう。「医薬分業」が進んだ今、外来患者には院外処方箋(院外の薬局で薬を処方してもらう場合の処方箋)で対応する病院も多くなり、病院で働く薬剤師には、調剤や服薬指導のほかに、「病棟業務」が増えてきています。
これは入院患者に対して、なぜこの薬物療法が必要なのか、薬の効用はどういうものなのかを、医師とは別に薬剤師としての立場から説明することです。病院では「チーム医療」という考えから、医師や看護師、その他の医療スタッフが一緒になって患者の治療、リハビリにあたるケースが増えてきています。薬剤師もそのチームの一員であることは言うまでもありません。


■先日、『Azest』のインタビューに答えてくださったK大学付属病院の薬剤師Sさんは、
「大学病院の薬剤師の仕事は膨大で非常に幅広いのです」と説明してくださいました。
「医療事故を防ぐ、リスクマネージメントの観点から、血液中に直接入る注射薬や点滴薬は薬剤師が処方内容をチェックし、無菌的調整をするようになってきています。最新の薬に関する情報などを院内のスタッフにインフォメーションするDI室というのも大学病院にはあります」
とのこと。
そんな彼女が主にかかわった業務は、「TDM(Therapeutic Drug Monitoring)業務」薬物治療モニタリングとも訳されます。患者の血液中の薬物濃度を測定し、その濃度を元に患者の状態に一番適した薬物療法を行うことです。例えば臓器移植に関しては、拒絶反応を抑えるため免疫抑制剤を使うのですが、こうした薬は患者ひとりひとりによって反応が異なり、薬の適用量などを決める“さじ加減”が非常に難しいのです。TDMは、医師と薬剤師が双方の知識や技術を最大限に活かして行う業務であるのです。


■現在、Sさんは臨床でのさまざまな業務経験を踏まえて、「薬が効く患者と効かない患者の違いは、どこにあるのか? 薬物療法の前にそのことがわかるには何が必要か?」というようなことを解明する研究をしています。「薬学の最終ゴールには患者さんがいるのです。私はもともと研究職希望だったのですが、臨床の現場に接したことで、よりモチベーションが高まりました」と語ってくれました。


大学の研究室にずっといるだけでは見えなかったであろう、「効果的でなおかつ安全に薬物治療を行えるようにする」という、薬学部の究極の目標をSさんはいつも心に留めていると話してくれたのです。


〜次回は来週土曜日に!〜