素人っぽく、泥臭く(2)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


しかし、このとき思い出したことが。
もう5、6年前になるでしょうか。今マラソン解説者として活躍中の増田明美さんと、ある企業の社長との対談をセッティングしたときのことです。私は自分も長距離ランナーだったこともあり、仕事を通じて彼女に会えるということに、とても興奮していたのを覚えています。


彼女に挨拶をし、対談の流れなどを説明しているときに、こう言われました。
「小谷サンって、素人っぽくていいわね」と。


きっと、彼女が今までたくさん仕事をしてきた人の中でも、私は「仕事相手」というよりも、「一人の増田明美ファン」として彼女の目に映ったのでしょう。決して私を蔑んでの言葉ではなく、むしろ暖かみのある言葉でした。


私はどうやら、この頃からさしあたって変わっていないようです。
いつまでも「素人」な物腰が自分にはあるようで、それを「いいわね」という人もいれば、「落ち着きがない」と不安(不快)に思う人がいるのだと、気づきました。そしてYさんは、後者の人なのだろうと。Yさんは「私の会社で受けた仕事ですから、しっかり(私のように)落ち着いた大人の女として仕事をしてきてください」と、伝えてくれたのだと解釈しました。


私はとかく、自分に向けられるこうした言葉に一喜一憂してしまいがちなのですが、きっとそれが「素人っぽい」ところなのでしょう。


社会に出ると、新人でも無い限り周囲は自分の振る舞いを注意してくれなくなります。そして大人になるに従って、あれこれ言われることを素直に受け入れられなくなります(高校生だってそうかもしれませんが)
だからこそ「あなたって●×ですね」と、人から言われること、特に自分に対して厳しく響く言葉に、客観的に向き合う必要があるなあと感じたものです。