幅が広がる動物の仕事(1)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


先日、ある雑誌の取材でトリマーの方とお話させていただきました。

トリマーといえば、動物の美容師さん。ペット(主に犬)のブラッシングやシャンプー、カットのほか、爪切りや耳掃除、健康状態のチェックなどをする人です。チワワやプードル、シュナウザーなどのワンちゃんを飼われている方は、トリマーさんの働くペットサロンに行く機会もあるでしょう。


この日、お会いした方(仮にSさんとしましょう)はご自身でも犬を飼われていて
「小学生の頃から、犬の仕事に就こうと決めていました」
とのこと。犬の仕事の中でもトリマーを選んだのは、
「ハサミを使う『手に職』の仕事だったのと、自分でできれば自分の犬もシャンプーしてあげられるから」
という理由からでした。


トリミング(犬の毛をカットすること)に慣れていない犬だったり、飼い主に甘やかされて育った犬だと、ワンワン吠えたり、ハサミに向かって噛んでくるとか。
「トリミング中、ウンチをしてしまうコもいますし、犬の匂いや毛が服にもついてしまう。決してキレイな仕事ではないので、本当に動物が好きでなきゃできないですね」
と、Sさんは語ってくれました。


「外国にある、捨て犬を保護するシェルター(SPCA)でボランティアトリマーとして働くのが夢」
というSさん。日本には保護シェルターがまだないことを、とても残念に思っているそうですが、
「トリミングをして、ワンちゃんをかわいくすることで、犬を捨てる飼い主をすこしでも減らせればって思います」
と、話してくれました。


環境省では、2017年度までに捨て犬や捨て猫を半減させる目標を立て、動物愛護行政のよりどころとなる「動物愛護管理基本指針」に盛り込みました。2004年度の集計によると、捨てられたり迷子になったりして保健所に引き取られた犬は18万2千匹、猫は23万9千匹。9割以上は引き取り手がなく、殺されているといいます。


空前のペットブームで、犬や猫に癒しを求めている人は多く、家族同様にかわいがられているペットもいる反面、こうしたかわいそうな動物たちは後を絶ちません。犬や猫が好きな人は、こうした、動物を取り巻く厳しい現実を見据えて、将来の仕事を探してみるのもいいかもしれません。


日本に、動物の保護シェルターができて、捨てられた犬や猫が新しい飼い主にかわいがられて、多くの人の心を癒してくれる日を、願ってやみません。


〜明日に続きます!〜