幅が広がる動物の仕事(2)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター



動物にかかわる仕事は、「トリマー」以外に、どのようなものがあるのでしょうか?


まずは、動物のお医者さんである「獣医師」。ペットだけではなく、家畜の診断、治療、保健衛生指導、伝染病予防を行うのが主な仕事です。
野生動物や希少動物の保護、繁殖などにかかわったりすることも。獣医学科を卒業後、国家試験を受け免許を取得する必要があります。病院以外に、保健所や動物園、民間の製薬会社など研究員として働く人もいます。


また、獣医師のフォローをする「動物看護師」もいます。家族の一員としてペットを飼う人が増えた今、そのニーズはますます増えています。公的資格ではありませんが、日本小動物獣医師会認定の動物看護師資格を得て、動物病院や動物園、水族館やペットショップで活躍することができます。


つぎに「ドッグトレーナー」。犬のしつけなどのトレーニングを専門に行います。家庭犬のほか、盲導犬聴導犬介助犬といった「補助犬」、警察犬、災害救助犬などの専門犬を育てる場合もあります。例えば盲導犬の場合は、国家公安委員会が指定する盲導犬訓練施設に就職し、「研修生」「盲導犬訓練士」「盲導犬歩行指導員」の3段階で協会の認定を受け一人前になります。
人気が高く狭き門で、一人前の盲導犬訓練士になるには平均3年、盲導犬歩行指導員になるにはさらに5年以上かか
るという、厳しい仕事です。


また、人間同様、ストレスを抱えた犬のケアをする「ドッグセラピスト」という仕事もあります。犬の動物としての生態や習性を熟知し、犬の病気や心のトラブルを未然に防ぐ予防法や健康法に精通するスペシャリストで、飼い主と犬を結ぶ架け橋としての活躍が期待されています。まだ公的な資格はなく、各団体やスクールが独自に認定制度を設けています。


さらに犬や猫、鳥などの小動物を、心身に障害のある子供や痴呆症の老人に触れ合わせることでリハビリテーションに役立てるの「アニマルセラピスト」という役割もあります。動物を介在する治療法は欧米の医療現場では一般的な方法として普及していますが、日本ではボランティア活動に留まっているのが現状です。医師や理学療法士、獣医師、または社会福祉士介護福祉士などの職業に就くことで、動物介在治療法を実践するチャンスがあるでしょう。


その他、ペットショップの店員や動物園や水族館の飼育係など、動物と触れ合う仕事の幅は、ますます広くなっています。
いずれも、「動物が好き」なことが一番ですが、それだけで勤まる仕事ではありません。「動物にかかわる仕事」も、以前紹介した「英語の仕事」同様、専門性が求められているといっていいでしょう。


トリマーであれば、トリミングの技術が必要ですし、獣医師や動物看護師であれば獣医学や治療に関する知識が、訓練士であれば犬の生態を熟知し訓練に役立てる必要があります。ドッグセラピストやアニマルセラピストであれば、犬や人間を取り巻くストレスや環境を察知することが大切です。


あなたは、動物を取り巻く何に、今一番興味ありますか? これらの職業に就く、就かないにかかわらず、「人間と動物との共生」について、真摯に考えてみてはどうでしょうか? ワンちゃんと遊びながらでも、動物の出てくる映画やドキュメントを見ながら、小説を読みながらでもいい。何か、将来に向けてのヒントが、そこに隠されているかもしれませんよ。