3人の編集者との仕事を通じて(3)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


3人目の編集者は、28歳の男性編集者、Tさん。
Tさんは、3カ月前に転職し、この編集部に配属されてきたばかり。
「じつは、ページを担当するのは今回が初めてなんです。よろしくお願いします」とのこと。


Tさんの企画ページも、先週紹介したSさんと同様、スタジオにモデル数人を読んでインタビューを進めるというもの。
「食事」に関する内容の企画だったため、モデルたちだけでなく、料理の写真もたくさん写さなければならず、Tさんはその段取りにずいぶんおわれていました。
撮影取材が終わった後も「今日の段取りどうでしたか? 他の雑誌ではどんな風にやっているのですか?」といろいろ気にしている様子。
しかも、1日では終わらず、後日追加で取材が必要とのこと。「小谷サンにも来てほしいのですが」と言われ、2日後に再度モデル数人といっしょに彼と会いました。


私は正直、段取りそのものがスムーズでなかったことよりも、このページを彼がどんな風な形に仕上げようとしているのかがなかなか見えてこなかったことが不安だったため、そのことを伝えました。
「そうですね、では打ち合わせしましょう」ということで、いっしょになって企画の確認をしたものです。
「ここは僕が資料を送りますので、こっちは小谷サンが判断して選んでいれてください」など、互いの役割分担を明確にしていきました。
話し合った結果、私もページのイメージができてきたし、彼も自分がすべきことが何かわかってきて「勉強になりました」と言ってもらえました。


レイアウト指定に関する資料は、通常郵送されてくるのですが、スケジュールが押していたため直接会って受け渡しをすることに。
Tさんは「もう2日間、徹夜なんですよ」といって、目の下にクマを作って疲れた表情で現れましたが、先が見えてきてほっとしている様子でした。
彼とはなんやかんやで、3度も直接会って、企画に関してやいのやいの話し合いました。
電話やメールのやり取りではなく、直接会うのは最近では本当に珍しいことなのです。


「この仕事をする前、旅行関係の本を出版している会社でずっと営業の仕事をしていました。でも、編集の仕事がしたいと思って転職したのです。本当は文芸(書籍)の編集をするのが希望なんです。小谷サンは詩を書いたりはしないんですか?」というTさん。
私が詩を書くかどうかは別として、彼が編集者としての第一歩を踏み出す、そのシーンにかかわれたことを私自身ちょっぴりうれしく思いました。


後日、Tさんからメールが。
「初企画でトラブル続出でしたが、なんとか形になりそうでホッとしています。引き続いて第二段の企画を行うことになりました。日程的な都合が合いましたら、ぜひお願いしたいと思います。
入稿スケジュールは、今月よりかは余裕ができる…はずです」。


OKさせていただいたことは言うまでもありません。
彼とは、長い付き合いになりそうな予感。私にとっても、何かの第一歩のような気がしています。