仕事の幅も広がる、私的流理系のすすめ(3)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター



先月、九州各地や長野県で大雨により大きな被害が出ました。
こうした夏の「異常気象」には、地球温暖化が深くかかわっていると考えられていますが、日本だけではなく世界各地にさまざまな現象が見られました。
ヨーロッパ各地では40度を超える日が続き、フランスでは高齢者を中心に死者が出たといいますし、チェコでは電力供給が追いつかず電力会社が緊急事態宣言を出す始末。オランダでも7月の最高気温が過去最高になったといいます。
また、アメリカのニューヨークでは連日の猛暑で冷房機器の使用量が異常に増えて停電が相次いだとか。


このように、夏の「異常気象」と、電力供給、そして地球温暖化の関係は、どれも原因であるようだし、結果でもあるようだし、切っても切れない関係のようです。
それだけ、私たち人間の活動サイクルが、世界レベルで地球や自然に影響を与えるものとなっていると考えていいでしょう。


先日、Z会基礎科情報誌『Azest』のおシゴトBOXインタビューで、電力会社の技術者Hさんといろんなお話をさせていただきました。
詳しくは、9月号の紙面を楽しみに待っていてほしいのですが、Hさんは子供のころから「コンセントにプラグを差し込むと電気が流れる。不思議だな〜って思っていました」と言います。


数学や物理が得意だったというHさん。アメリカの大学で電子工学を学び、卒業後日本に帰国し電力会社に入社されたということです。


「電気関係のメーカーとか、エネルギーを供給している会社とかいろいろ就職先を考えたのですが、僕は製品を開発するというよりは、技術を使って幅広い仕事がしたいと思ったのです。電気って基本的に社会に必要なものですよね?  生活を根底から支えているという使命感はありますし、環境面でもいろいろな対策をうっているので、社会貢献しているというやりがいもあります」


と、語ってくれました。


日本は資源が少ないにもかかわらずすぐれた電力供給システムを持っています。
以前、インタビューした国際機関で働くKさんは、大学時代、エジプトから来た留学生から「日本は停電がないのがすごいね!」と言われびっくりしたといいます。停電があるのが当たり前の国がある、そこで自分ができることはないか? という気持ちから出発して国際語である英語を学び、国際貢献の仕事を目指したのがKさんだとしたら、Hさんは、自身の技術力をツールとして、さまざまな国とコミュニケーションをとっている方です。


インドネシアで技術研修を行ったり、ネットワークの工事に携わったり。マレーシアや中国でも海外セミナーを開きました。今は、電力自由化という課題に取り組むために、アメリカやカナダの電力会社に出張して、業務改善に取り組んでいます」


とのこと。海外を含めた技術者といろいろ情報交換をし、お互い刺激し合うことに、何よりの充実感があるといいます。


そんなHさんからの高校生へのメッセージが印象的でした。


「社会に出たとき、仲間とプロジェクトをやったり、調査をしたりというときに、大切なのがコミュニケーション
海外に出るととくに、技術の基礎は大前提となりますが、いろんな国の人に日本の文化を知ってもらう必要があります。だから、高校時代は、受験勉強で大変かもしれないけれど、幅広く本を読んでいろんな知識を深めてほしい。広い視野をもって、勉強に取り組んでほしいですね」


Hさんのように、理系の技術を“英語”のようなツールとして海外とコミュニケーションをとることもできるのです。
将来、国際的な仕事をしたいと思っている方は、英語はもちろん、理系な“何か”を自分のモノにしていると、貢献の幅が広がります。
環境問題に揺れる今、Hさんのような「チャレンジ精神を持った、前向きな」高校生が増えてくれることを、世界中が期待しているのです。