仕事の価値観はいろいろ(2)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


今回は、私が夏休みに出会った仕事人について、紹介させてもらっています。
さて、海での仕事人としてライフセーバーのほかに、私があったのは“漁師”です。


“漁師”といえば、先日NHKの夏の特別番組で「海の男さ なる〜青森・漁師の卵たち〜」を放送していましたが、ご覧になった方はいますか? (私は見そびれてしまったので、再放送を見る予定です)
青森県立海洋学院の、漁師を目指す15歳から18歳の少年が主人公。
ロープ結びや実習船を使った本格的な漁などを学び、一人前の海の男に成長していくひと夏の試練を描いたものだそうです。
若い人で、漁師を目指している人がいるって言うのを知って、なんだか安心しました。


というのも、私が夏に出会ったのは50〜60歳という漁師さんばかり。
じつは、西伊豆の小さな漁村で定置網漁を体験したのです。
“定置網漁”とは、海の中に張った網のなかに魚が迷い込んだときに獲る漁法。10人程度が乗れる小さな船で、朝4時に沖に出て魚を捕ってきました。海の状態や季節によってとれる魚はさまざまで、実際に網を引き上げるまではどんな魚が捕れているかわかりません。この日はサバ、イカ、トビウオなどが獲れました。


網にかかってパニックになった魚たちが暴れるなか、漁師さんたちはそれぞれ魚をすくう人、毒などを持って害になる魚を分ける人、生け簀に魚を入れる人、網を押さえる人など、チームワークも抜群。私たちはただ、邪魔にならないように船上で見ているだけでしたが、こうして漁師さんが毎朝漁に出ているおかげでおいしく、新鮮な魚が食べられるのだなあと、改めて思ったものです。その日の朝食は、獲れたばかりのサバの塩焼き。脂がのって本当においしかったです。


漁業には大きく分けて遠くの海へ出て何日も漁をする「沖合・遠洋漁業」と、比較的近くの海で漁をする「近海・沿岸漁業」とにわかれます。カツオ・マグロ・イカなどを狙う遠洋漁業は、1カ月から1年以上も日本に戻らない場合もあるといいます。


世界一、魚好きの日本を狙って世界各国の漁船が水揚げを競っているとのこと。
私たちが大好きなマグロ漁船の乗組員も外国籍の人が多いといいますし、日本の漁師は高齢化が進んでいるといいます。
定置網漁をしながら、「この人たちがだんだん年を取って船に乗らなくなったら、誰がこの新鮮でおいしい魚を捕るんだろう?」なんて、余計な心配を、私もしてしまいました。
第一次産業の担い手が減る、高齢化が進むことは、自分たちの豊かな食文化を手放すことになるのかも、と。


でも、そうなる前に、漁師さんらの息子たちが都会から帰ってくるのかもしれません。
そうなったとき、きっと彼らは息子たちに、漁の手ほどきをするのでしょう。
自然相手のシゴトだから、最初は思うようにいかないだろうけれど、それもだんだん慣れてくるのかも。
豊かなこの海を、大切にしようという気持ちがあれば、そして体力があればいつからでも始められる仕事なのかもしれない。
こんな風に思ってしまったのです。
実際に「他の乗組員との協調性も大切だから、漁師には30歳前後の、社会や世間の風を受けた人のほうがいい」という声もあるようですし。


高収入とか、ビジネスの世界で成功するとか、勝ち組とか、そういった価値観とは別の何かが、漁師というシゴトにはあると感じています。
シゴトって、ライフスタイルなんだなあっていうとこでしょうか?


海辺の町で暮らす人、実際に漁師であるという人の意見を、ぜひ聞きたいです。
(そんな甘いもんじゃないよ!、という声、大歓迎です)


〜続きは、26日(土)に!〜