仕事の価値観はいろいろ(3)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


さて、伊豆という日本の古くからの観光地・レジャースポットで夏休みを満喫してきた私ですが、
泊まった旅館もなかなか興味深いところでした。


そこは、昭和12年にたてられたという和風旅館。
時代をへて建て増しを繰り返したというだけあって、入り組んだ複雑な構造になっています。天井も低く、迷路のような雰囲気。階段も多く、間違っても「バリアフリー」な宿ではありません。


でも、木造のしっかりとした佇まいに、本当にほっとさせられたのです。聞こえるのは夏の虫の声ばかりというのも気に入りました。(ちなみに、携帯の電源もほとんど入らないような旅館だったのです)


純和風な旅館ほど、外国人には魅力的なのか、私たちが泊まった日も外国からのお客様がいました。
旅館の朝食というと、ごはんに味噌汁、焼き魚に温泉卵(納豆、海苔など)が定番だと思いますが、彼らにはパン食が用意されていました。


直接、仲居さんと彼らがコミュニケーションをとっているのを見てはいませんが、おそらく英語のできるスタッフが対応していたと思われます。


以前、「英語を活かすシゴト」というのをいろいろと紹介しましたが、こうした「純和風旅館で働く」というのも、英語を使うチャンスのある仕事ですね。
日本的であればあるほど、外国人を魅了するわけですから、外国語ができればサービスの幅も広がります。


特に、日本旅館にはホテルにはないルールがたくさんあります。

  • 玄関で履物を脱ぐ(部屋ではない)
  • 畳の部屋の使い方(畳の上にイスはない)
  • 大浴場の入り方(水着を着てはいけない)
  • 仲居さんへの接し方(チップは渡さなくてもいい/旅館による)

などなど。


ホテルというのは、部屋以外のロビーや廊下、ラウンジなどは「公共の場」という考えですから、そういう場所で例えば、バスローブ姿でうろつくことは考えられませんが、
日本旅館の場合、特に温泉宿でしたらみんな、お風呂上がりの浴衣姿でくつろいでいます。
そういうルールを、もちろん事前に外国からのお客様が情報として知っているとしても、直接のやり取りで伝えられたら、きっと外国人からも感謝されるはずです。


余談ですが、以前知り合ったフリーの翻訳者の方から、「私が翻訳者になったきっかけは、旅館に勤めていたから」という話を聞いたことがあります。
何でも、彼女が働く旅館を訪れる外国人客が多くなって、外国人にもわかるように、旅館内の案内に英語表記を載せたり、英訳のパンフレットを作ったりするようになり、英語のできるスタッフが他にいなかったため、彼女にその仕事が大量に回ってきたそうです。
最初は「わ〜、得意な英語が使える!」とおもしろがってやっていたそうですが、だんだんと「あれ?これで正しいのかしら?」と自分の訳が正しいのかどうか不安に思って、いろいろ調べて行くうちに、「英語を極めたい!」と思って、本格的に翻訳の勉強をし始めたそうです。


純和風な旅館で、インターナショナルな仕事。今の時代だからこそ、できることなのかもしれませんね。


〜続きは、明日!〜