矛盾を抱えながら、思いやりを持ちながら(3)
大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜
【執筆】小谷祐子(フリーライター)
福祉や介護の仕事の担い手として、最後に紹介したいのが、私のパートナーです。
彼は(仮にTさんとしましょうか)は、建築事務所で働いた後、「年をとってからも住める家づくりに関わりたい」という思いを募らせ、いったん建築設計の現場を離れ、「福祉住環境コーディネーター」という資格のための勉強を始めました。
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障害(障碍)を持つ人たちに優しい環境づくり、いわゆる“バリアフリー”を生活の場である住環境から変えて行くことを提案しています。福祉・建築に関して幅広い知識を身につけ、適切な住宅改修プランを作成するのが仕事です。
- バリアフリー住宅への新築、建て替え、リフォームにおけるコーディネート
- 介護保険制度下での住宅改修にかかわるケアマネージャーとの連携
- 福祉施設、福祉や保険サービス、補助制度などの情報提供
- 福祉道具や介護用品、家具等の選択や利用法のアドバイス
以上のように、住宅介護の“ハード”面をサポートするのが、役割です。
活躍の場は、
ど「福祉分野」が主なところです。
Tさんは「福祉分野」、在宅介護サービスを総合的に行っている介護事業所で今は働いています。
仕事の流れは、ケアマネージャーから、住宅介護に必要なプランの依頼を受け、お客様(この場合、要介護認定を受けている高齢者の方)のお宅に訪問します。
例えばレンタルベッドが必要であればどんな形式のものがいいか相談したり、お風呂にシャワーイスを設置したり、階段に手すりをつけたりする場合に、どんなものがいいかを具体的に提案します。それらは主に、介護保険サービスを利用したものとなります。時には、車いすが使えるようにキッチンをバリアフリー化したりといった、大規模なリフォームも手がけるといいます。
一番のやりがいは?と聞くと、「やっぱり、要介護のお年寄りに『使いやすくしてくれてありがとう』って言われるとうれしいよ。トイレを和式から洋式に変えた人がいたんだけれど、それまでしゃがむのに膝が痛かったり、転んでしまったこともあって、トイレに行くのが苦痛になっていたんだけれど、使いやすくなったって。それから、奥さんの介護をしているご主人から、『介護するのが楽になった』って言われるとホッとする。要介護者にいいサービスは、家族にもいいことなんだって伝わるとうれしいね」
〜続きは、明日!〜