「職業としてのお医者さん」を考える(3)


大学受験の先にあるもの〜職業を考える〜


【執筆】小谷祐子(フリーライター


さて、泌尿器科医のK先生。
「実は僕、大学は5浪しているんです」というから、ビックリ!!


何でまた? さすがに医者の息子はいろんな意味で余裕がある、なんてまたしても偏見の芽が、むくむくと膨らんできた私に、彼は続けました。


「周りはだんだん、自分より年下になっていくんだよね。
そうすると、『こいつらと同じ机並べて6年間、勉強するのか』と思うと、正直気持ちが萎えた。
だから、受験に合格しても、蹴ってまた浪人っていうのを繰り返してました」


。。。こんなこと、誰に当てはめてもいいわけではありませんし、決して勧めません。
ですが、彼は
「6年間は、周りの仲間を含めて自分の最高の環境で医学の勉強をしたい」という願いが相当強かったと言います。
そして、最終的に合格した大学は、「ほとんどの学生が現役合格する医学部」だったそうです。


「結果として、周りは年下ばっかりだったけれど、『こいつらとだったら、ずっと一緒に学んで行ける』と思える奴ばっかりだった。今でも、出身大学の大学病院とのつながりは深く、地方都市の診療所としては、規模の大きな機械も導入できた。
こういうつながりを、大学時代に作れたのは、すごくためになった」


ちなみに、K先生は医学部は留年を1年もせず、国家試験も一発でパスしたと言います。
さらに、大学の付属病院に始まって、がんセンターや赤十字病院、国立病院など計7つの病院の各泌尿器科に勤務してから、“実家”の病院に勤務したということ。


これが、よくある道なのか、はたまたマイナーな道なのかは、もっと多くの医師と接してみないと分からないことですが、
私の中の、「医師=お父さんはお医者さん→学生時代からお金持ちで苦労知らず、超優秀で私とは別世界の人」という偏見が、ガラガラと音を立てて崩れて行ったことは、確かです。


その極めつけに、先生はこんなことも話してくれました。
「理系の必須科目を、物理にしたおかげで共学なのに男子クラスになってしまった!
せめて、生物を履修していれば。。。
思春期の多感な時期に、女のコと引き離されて。その恨みは今でもありますよ〜(笑)」


K先生は、自分の高校の隣のクラスにいた男子だったかもしれないのです!