もう一人の自分


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。


前回、「マルチな自分」というタイトルでブログを書きましたが、今回も同じ「自分」つながりで、、「もう一人の自分」というお話をしたいと思います。



「もう一人の自分」というのは、自分を「客観視できるようになること」を意味しています。


たとえば、仕事でとんでもないミスをしてしまった。お客さんが怒っている。上司も怒っている。一刻も事態を収拾しなければならないのに、頭に血が上ってしまって何をしていいかわからず呆然として何も手がつかない。泣きたくなるような気持ち。


あなたにはこんな経験ありますか?私にはあります。こんな状態を「自分を見失っている」と言いますよね。「自分を見失っている」というのは、どいういうことでしょうか?それは、しまった、どうしようといった「焦り」や「後悔」の感情に支配されて、冷静な判断ができなくなっているという状態です。


でも、ちょっとしたきっかけで、「自分を取り戻すこと」ができる場合があります。「自分を取り戻す」というのは、一歩引いた状態で全体を俯瞰し、客観的に自分や周りの状況を見つめることができるようになった状態です。


こうして自分を取り戻した時って、私には、まるで「もう一人の自分」が、元々の自分の1メートルほど上方にいて、私を見おろしているような感じです。周囲や自分の感情に振り回されている自分を突き放して冷静に見ているもう一人の自分。彼は、「おいおい、何焦ってんだい。できることをやるしかないだろ」とか、「起きてしまったことを後悔しても何も換わらないよね。今から何をすべきか考えようよ」などと、落ち着いた声でアドバイスしてくれるとてもありがたい存在です。


今年、アメリカ大リーグに挑戦した元巨人のピッチャー、桑田真澄選手は、ピンチに強い安定したピッチングに定評がありましたが、彼もまた「もう一人の自分」を意識していると聞いたことがあります。桑田選手は、残念ながら予期せぬケガによって今年の開幕メジャー入りの夢は消えました。相当に落胆していることと思います。しかし、だからといって自暴自棄になったりすることはないでしょう。おそらく、桑田選手の中の「もう一人の自分」が、つらい気持ちに押し流されそうになることをくい止めてくれているからです。



さて、あなたには、「もう一人の自分」はいますか?いなければ、「もう一人の自分」を意識的に作り出しちゃいましょう!


仕事にしろプライベートにしろ、大変な状況に放り込まれて茫然自失になることって時々ありますよね。たとえば、結婚式でスピーチを頼まれてしまった。話す内容をしっかり練ったはずなのに、マイクを前にしたら、頭が真っ白になった。あるいは、資格試験に臨んだら、ヤマが外れて違うところが出ていた。どちらも、脂汗がタラーリ。気ばかりが焦ってしまいますよね。


そんな時に、パッと自分の上方にもう一人の自分がいて、高いところから俯瞰しているという意識を持つようにするんです。「あ、オレ(ワタシ)、上がってるな、焦ってるな」と自分を客観視できるだけで、すっと楽になるものです。


もちろん、「もう一人の自分」を持つことはそう簡単にはできるようになりませんが、自分を見失っている状態をできるだけすばやく解消し、自分を取り戻すことができるようになれば、ストレスに強くなれます。厳しい状況でも落ち着いて行動できるようになるので、周囲の信頼も高まりますよ。



なお、私は、わかりやすさのために「もう一人の自分」という喩えを用いましたが、自分の思考・感情や行動を自分で客観視することを心理学の専門用語では「メタ認知」と言います。興味のある方は、検索エンジンなどで調べてみたらいかがでしょう。


ついでながら、自分で自分を客観視するのはやはり難しい。そこで、「もう一人の自分」的な役割をやってくれる第三者の助けを借りることがあります。それが、いわゆる「コーチ」です。誰よりもゴルフについては知っているはずのタイガーウッズでさえコーチを雇うのは、テクニックを学ぶためではないですね。客観的に自分のフォームを見てもらうため。本当の意味での「客観的な視点」で自分を観察してもらっているわけです。そして、最近流行の「コーチング」は、スポーツ選手だけじゃなく、広く一般のビジネスパーソン等を対象として、「コーチ」の役割をやってくれるサービスです(私も、ビジネスパーソン[主にエグゼクティブ]向けに、プロコーチの仕事を少しだけしています)。


(キャリア・アドバイザー 松尾順)