才能がないからって簡単にあきらめない


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。



時々、プロ野球やJリーグの監督やコーチの方が、若手の選手たちを評して、「プロ意識が足りない」とか、「ろくに練習しない」といった愚痴をこぼしているのを聞くことがありますよね。


プロ野球Jリーグなどのプロスポーツは、天賦の才能と、スポーツに打ち込める環境に恵まれた人が、小さいころから努力を重ねてきて、それでもようやくトップクラスの人だけが入れる入り口の狭い世界です。ですから、プロ選手は「一握りの選ばれた人」なのです。


それなのに、「プロ」としての意識が低いのはどうしてなんでしょうか。また、プロの世界でも結果を出したいと考えているはずなのに、なぜ怠惰になってしまうのでしょうか。




そもそも、彼らは「個人事業主」です。つつがなく働いているだけでも、給料がもらえることもある会社員とは違います。一定の成果を出すことを前提として、おおむね1年単位の契約を所属チームと交わしています。もし、成果が出せなかったら首です。


冒頭の監督やコーチの愚痴は、こんな厳しい立場にいることを自覚していない選手が相当数いるということを意味していますよね。実際、あふれる才能を持つ逸材と期待されながら、結局芽が出ることなくプロの世界を去っていく選手たちがいます。


今、「あふれる才能」と書きましたが、実はあふれる才能を持っているからこそ、「大成」できないということが起きるのです。


生まれつき得意なことは、本人にとってはごく当たり前のこと。小さいうちは、親や学校のクラブの監督に言われるがまま受身でがんばれるので結果を出せます。でも、プロの世界に入って、自分のことは自分で管理しなければならない自律した立場に置かれると、「自分には才能がある」という過信、うぬぼれが、地道な努力を阻害してしまうことになりがちなのです。


よく考えてみれば、周囲のライバルたちも、同じく才能を認められてプロになった人であり、才能に加えて継続的な努力を行わなければ、レギュラーの座は獲得できないことは明白のはずですけどね。




一方、才能的には必ずしも恵まれているとは言えない人が、血のにじむような努力をして、ついに栄光の座をつかむという事例はたくさんありますよね。


たとえば最近だと、プロスポーツではありませんが、アテネオリンピック男子体操団体金メダル獲得に貢献し、今は、来年の北京五輪の金メダルを目指している水鳥寿思(みずとりひさし)さん。水鳥さんは、小さいころから両親が経営する「体操クラブ」で文字通り英才教育を受けてきています。


水鳥さんは3人いる男兄弟の2番目、つまり次男坊ですが、3人の中で一番体が固かったそうです。ですから、当初はあまり体操が上達せず、親からもそれほど期待されていませんでした。でも、水鳥さんは体操が好きでしたし、うまくできないからこそ、水鳥さんは必死で練習を続けた。その結果が、世界のトップアスリートです。


水鳥さんの場合、実際のところまったく才能がなかったわけではないですが、まだ芽が出る前の段階で、「自分には才能がなさそうだ」と簡単にあきらめてしまわなかったんですよね。


スポーツの世界に限らず、ビジネスの世界においても、実は苦手だからこそ努力をし、いろいろな工夫をする。そうして、一流のスキルを獲得できることだってあるわけです。




あなたには、大好きなことだけど、「あまり才能がなさそうだ」と感じている分野がありますか。


そんな分野があったら、そう簡単にあきらめずとことんやってみたらどうでしょうか。やってみたけどやっぱり駄目だったという、残念な結果に終わるかもしれませんが、逆に苦手を克服して成功を収める可能性だってある。


また、うまくいかなかったとしても、「とことんやったこと」に対する「後悔」はきっとしないでしょう。人生において、「やりたかったのにやらなかった」ことほど大きな後悔はないんですよ。


(キャリア・アドバイザー 松尾順)