仕事が人生そのものと感じられるようになったとき
こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。
いきなりですいませんが、質問を投げかけさせていただきます。
- “あなたは、なんのために働いているのですか?”
- “あなたはその仕事(職業)をなぜ選んだのですか?”
なかなか即答しにくい難問ですよね。
しかし、人は「働くこと」について、「生きること」に関連した深い意義や意味を見出せないと、仕事をやる楽しみや喜びを見出すことができません。(このことは、若いうちはあまりピンとこないかも知れませんが)最初のうちは「お金」や「地位」などを手に入れるためといった、わかりやすい目的で頑張れても、いつかそれだけでは仕事に虚しさを感じるようになるものです。実際、仕事で大成功を収め、金も名誉も手に入れてしまったがゆえに、これから「何のために生きるべきか」に頭を抱える人は決して少なくありません。
ただ、不思議なことに、自分の心(私はあえて「魂」と呼んでいますが)の叫び(求め)に素直に従って行動し、歩んできたキャリアが順調だったにせよ、紆余曲折を経てきたにせよ、これが「天職」だと思える仕事に到達した人にとって、仕事の意味や意義を問う必要性は低くなるようです。おそらく、仕事が、自分の人生と不可分な存在に感じられるようになり、改めて「なぜ、自分はこの仕事を選んだのか、やっているのか?」を問い直す必要がないのです。
たとえば、コンテンポラリーダンスの世界で最近注目を浴びているダンサーの森山開次さん。
森山さんのダンスは、ダンスのことはよく知らない私が見ても、思わず引き込まれてしまう魅力を持っています。先日、森山さんの日常を追ったドキュメンタリー番組が放送されましたが、ご覧になった方はいらっしゃいますか。この番組の最後に流れた、森山さんの言葉もダンス同様に印象的でした。森山さんは、「なぜ、踊るのですか」という質問に対して、しばらく無言で考えた後、次のように答えたのです。
“踊りたいから踊るんです。はい。”
これは、森山さんにとって、「踊ることが自分の人生そのもの」であることがうかがえる言葉ですよね。つまり、踊る「意味や意義」を問い直す必要がないのです。なんともうらやましいことだと思います。
また、「ロック歌手」として超有名な矢沢永吉さんも、同じようなことをあるフリーペーパーのインタビュー記事で答えていました。
(ロックシンガーを目指した目的について聞かれて)
“最初はせいぜい、女にモテたい、これやってメルセデス転がせりゃ最高くらいのことよ。ただ、続けていく中で、違った何かに目覚めるから面白いわけ。で、長く続けていると、ロックシンガーが仕事であり、職業になる。曲を書く、コンサートを制作する、プロデュースできるのは手に職をつけるみたいなものだから。”
“だけど、好きじゃないと続かないし、辞められなくなるんだよ。金・女・車以外の何かに目覚めたら。それこそやみつき。それはコンサートの裏方さんたちも同じことを言いますよ。彼らは彼らで裏方病。他の仕事には就けない”
この矢沢さんの本質を突いた言葉で私は思いました。
仕事や職業を選ぶきっかけは、とりあえず何でもいいじゃないか。大事なのはとことんやってみることだろう。とことんやる過程で、その仕事の中に深い意義や意味を発見することができるようになる。そして好きになる。辞められなくなる。その仕事が「天職」と思えるようになる。その時、もはや仕事の目的は「仕事」そのものになっているのだろう。
実は、今の私の仕事も「天職」と自認できます。仕事の目的は、明らかに、金・女・車ではありません。(笑)仕事を通じて自分が磨かれ、昨日よりも今日、今日よりも明日と、着実に自分が成長している実感が得られることに大きな喜びを感じる毎日です。
今、誰かに「なぜ、あなたはその仕事をやっているですか?」と聞かれたら、森山さんと同じ答えになります。
“やりたいからやってるんです。はい。”
あなたも、自分の魂の叫びに従い毎日を完全燃焼して生きれば、きっと同じような心境になれる仕事に到達することができますよ。