「掘り下げ力」を生み出すエネルギー


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。


今回も、前回の「掘り下げ力」、および前々回「仕事の3つの喜び」と関連した話をしたいと思います。


中心テーマは、前回取り上げた「掘り下げ力」を生み出すエネルギーは何か?ということです。



さて、「掘り下げ力」とは、「物事を深く考えてみること」でした。そして、深く考えれば考えるほど、「そうか、わかったぞ!この仕事のポイントはここにあるんだ!」などと、新しく気づくことが増えてきます。まるで、「アルキメデスの原理」を発見して、湯船を裸で飛び出したアルキメデスのように、「発見の喜び」に満たされ、ますます仕事が面白くなってくるわけです。


ただ、前回にも書いたように、物事を深く掘り下げて考えるのはとても大変な作業です。しかも、かなり意識しないと、だんだんと考えなくなってしまうのが私たちの一般的な傾向です。


「人」は、というか、そもそも「動物」は、できるだけ無駄なエネルギーを使わないように毎日を過ごします。犬猫をはじめ、多くの動物が一日の大半を寝て過ごすのはそのため。動けば動くほど早くお腹が空き、またすぐに「えさ」を探しにいかなければならなくなりますから。「人」も同じように、本能的にはできるだけ行動しないことを選択しようとします。したがって、ものぐさ、ぐうたらな人は、ある意味「本能」に忠実に生きているのだといえます(笑)。


考えることも同じです。私たちは、なるべく「節約した思考」(節約思考)をしようとします。たとえば、歩くとき、「まず右足を30センチ先の地面に踏み出し、次に重心移動しながら、左足をさらにその前に出す・・・」などといちいち考えないですよね。また、横断歩道では、信号を見て「渡れ」は青、「止まれ」は赤、と無意識に判断して、その通り行動しています。横断歩道を渡るたびに、“なぜ「渡れ」は青で、「止まれ」は赤なのか?”などという疑問を考えていたら疲れてしまいますよね(笑)。


つまり、私たちの一日の行動のほとんどは「無意識化」されてしまうのです。そのほうが脳のエネルギーを消費しないからです。「先入観」「固定観念」は、こうした「節約思考」の結果ですし、「常識」に囚われてしまうのも、節約思考の結果だと言えます。



しかし同時に、私たちは逆の欲求も持っています。「未知なるもの」や「わけがわからないもの」「変なもの」が何なのかを知りたいという欲求です。すなわち「好奇心」です。「節約思考」が、できるだけ現状を楽に維持することに役立っているとするなら、「好奇心」は、現状を変革することに寄与します。実際、人の持つ「飽くなき好奇心」が、物事の不思議を次々と解明し、社会の発展をもたらしたのです。


さて、ここまで書けば冒頭のテーマの答えはおわかりでしょう。


「掘り下げ力」のエネルギーは、「好奇心」です。


自分のまだ見ぬ世界を探求したいという気持ちが、物事を深く考えるエネルギー=動機づけになります。


では、これまでの話をまとめましょう。「発見の喜び」を得るためには、「掘り下げ力」が不可欠である、そして、「掘り下げ力」を発揮するためには、根底に「好奇心」が必要ということです。



ところで、「好奇心」の強さは個人差が大きいようですね。私の知る限りでは、一流と呼ばれる経営者や専門家、芸術家、アスリートの方々は、皆さん、強烈な「好奇心」をお持ちです。好奇心こそが、新たなアイディア、工夫を生み出す原動力となり、成功につながったのだと思います。マネックス証券(株)の代表取締役社長、松本大氏などは、“経営で一番重要なのは「好奇心」である”と断言されているほどです。


この「Z会ブログsideB キャリアでざいんBOX」をお読みのあなたは、なんらかの学びに取り組まれている方ですよね。「学び」とは端的にいえば「自分にとって未知だったことを知ること、理解すること」です。したがって、あなたは、とても強い好奇心をお持ちの方だと判断することができるでしょう。どうか、その「好奇心」を失うことのないように。そして「掘り下げ力」につなげていきましょう。


(キャリア・アドバイザー 松尾順)