資格は役に立つのか?


こんにちは。
キャリア・アドバイザーの松尾順です。


いつもは、どちらかと言えば抽象的な話が多いこのコーナーですが、今回は、このブログをご覧になっている皆さんにとって最も身近なことを取り上げてみたいと思います。


すなわち、「資格は役に立つのか?」という古くて新しい「問い」に対する私自身の考えをお伝えします。


なお、ここでの議論の対象とする「資格」には、FP(ファイナンシャルプランナー)や行政書士などの純粋な「資格」だけでなく、特定分野について一定水準の知識や技能を持っていることを認定するMBAや簿記、英検、TOEICなどの試験も含めて考えます。



さて、資格は役に立つのか、もちろん私の答えは「YES」です。役に立ちます。その理由として3つ挙げたいと思います。

  • 1 就職・転職に有利である
  • 2 専門分野の「基本知識」が習得できる
  • 3 自分に自信が持てるようになる


それぞれについて説明します。



1 就職・転職に有利である


ある程度難易度の高い資格や認定試験に合格していれば、履歴書に書けますよね。私の場合、30歳前後に、「中小企業診断士」と「英検1級」に合格したのですが、その後の転職の際の履歴書には、もちろんこれらの資格を記載しました。実際のところ、どれだけそれらの資格が評価されたのかわかりません。しかし、採用する側に立てば、もし同じようなレベルの候補者が別にいた時、やはり資格のある方を選択するでしょうし、書類審査に通る可能性が高くなることは間違いないでしょう。就職にしろ、転職にしろ、採用を巡る応募者同士の競争だというのが現実ですから、「武器」はいろいろと持っていたほうがいい。すなわち、「資格」は、就職・転職を戦い抜く有効な武器になります。


ただし、ただ講座を受講するだけで修了証がもらえたり、一夜漬け勉強で合格できるような安易な資格の価値はゼロです。そうした資格は、「見かけ(名称)」だけは立派な刀に見えますが、実態はただの「木刀」です。切れ味は悪い。就職・転職の真剣勝負で勝てるはずがありません。もし私が面接官だったら、安易な資格を取得し、履歴書にずらずらと列記してくるような応募者は、「見かけだけ取り繕う手抜き人間」と判断して絶対に採用しません。安易な資格は、遊びで取るのはご自由ですが、キャリアアップにはまったく役立ちませんので、時間と金の無駄になることを認識しておきましょう。



2 専門分野の「基本知識」が習得できる


「専門的な知識・スキル」は、誰もが持っているわけではないので、自分ならではの「強み」になりますよね。資格取得のための勉強を通じて、専門的な知識・スキルが習得できるというのはキャリアアップに大きなプラスです。ですから、私が強調したいのは、できれば「合格すること」を最終目的にしてほしくないということです。


さて、本屋の資格試験コーナーに行くと、「○○資格に最短で合格する法」といった類の本がたくさん出回っていますよね。これらの本に書かれている「効率的に勉強して合格するテクニック」は、単に「箔」をつけたいから資格を取りたいのだ、ということであれば活用していただいて結構だと思います。しかし、その資格で学んだ専門知識・スキルを「実務」に役立てることが目的なら、むしろ、非効率な勉強法をお奨めします。


すなわち、「その資格を取る」という強い動機付けを活かしてその専門分野を幅広く深く学んでみるのです。人は目標がないとなかなか勉強にも身が入らないものです。「資格試験合格」というやりがいのある目標をエネルギーにして、専門知識を貪欲に吸収する。試験に出そうなところだけを集中的に勉強しない。「試験対策」のための勉強ではなく、資格取得後に「専門家」として活躍することを目的に、専門知識を体に沁みこませるようにするのです。単に理解しているのではなく、活用できるレベルを目指すのが私の「資格」活用法です。


私は以前から「資格は取得することに意義がある。保持することにはあまり意味がない。」ということを言ってきました(もちろん弁護士や公認会計士など、その資格を保持していないと仕事ができないものは除きます)。試験勉強を通じて身についた「専門知識」、そしてそれを実践で使いこなせることに価値があるのであって、「資格」そのものを保持し続けることはあまりそれほど意味がないと私は考えています。


というのも、専門家としてのスキルは、資格取得後は独学や実践を通じて高めていけばいいからです。私の場合、「中小企業診断士」の資格の更新は2年目に止めました。中小企業診断士の肩書きを保持することは、経営コンサルティングをメインでやっている方には意味があるでしょうね。しかし、私はマーケティングに特化していますので、保持する価値を見出せませんでした(更新には結構お金がかかるのです)。それでも、この資格取得のために学んだ「財務」や「労務」など経営全般の基本知識は、経営全体の視点からマーケティングを考える上でおおいに役立っています。まさに、取得することに意義があったという実感を持っています。


なお、また厳しいことを書きますが、「資格試験合格者=専門家」ではないということを肝に銘じておいてください。資格試験で認定されるのはあくまで「基本知識」「基本スキル」です。現場への応用は一筋縄ではいきません。「専門家」とは、専門知識・スキルを活用して現場での問題解決を図れる人です。資格を取ったからといって自分は「専門家」だとは考えないこと。ようやく「専門家もどき」になっただけだ、という謙虚な気持ちを持ち、真の専門家を目指して日々の鍛錬を怠らないことです。



3 自分に自信が持てるようになる


難易度の高い資格を目指して、長期間にわたって勉強を継続するのは大変なことですよね。しかし、最後まで投げ出さず、とうとう合格証を手にしたときの嬉しさには格段のものがあります。そして、「やりきった」という成功体験は、自分に対する自信を与えてくれます。「資格」は、仕事で何か難しい業務に直面したとき、「自分ならやってやれないことはないだろう」という「自己効力感」を生み出してくれるのです。そうして、次々と難しい仕事に取り組んでいくうちに、あなたのビジネスパーソンとしてのキャリアがますます磨かれていくわけです。


また、資格をお持ちの方はおわかりになると思いますが、勉強方法にはコツがあります。どのような形で勉強すれば理解が速いのか、またやる気を維持するためにはどんな工夫が自分には効くのか、ということがわかるので、別の新たな資格にチャレンジするのが簡単になるんですよね。

なお、1の説明と同様に、簡単に取得できる資格が与えてくれるのは「見かけ倒しの自信」に過ぎません。自分に自信が持てるようになるためには、現在の自分から見て、そこそこ難易度の高い資格を目指しましょう。(最初からあまりに難易度の高い資格は避けましょうね。自信喪失の元になりますから。)


(キャリア・アドバイザー 松尾順)