ヤンソンス、ヤンソンス、ヤンソンス!!
芸術の秋ですね。
私は、指揮者ヤンソンス率いるバイエルン放送交響楽団を3公演聴いてきました。
11月17日(土)@ミューザ川崎
11月19日(月)@サントリーホール
11月23日(金)@サントリーホール
2005年の来日公演も聴いたのですが、その時よりもオーケストラの水準が上がり、ヤンソンスとの呼吸も合ってきている様子(前回の「トリスタンとイゾルデ」前奏曲は空中分解したような演奏でした)。
- ブルッフ サラ・チャンの情熱的な演奏が印象的。終楽章はインテンポでスポーティに駆け抜け、爽快でした。
- マーラー 今回のベスト。マーラー5番に秘める悲劇性だけでなく、混沌を引き出し新鮮な感動を覚えました。特に2楽章・3楽章がすばらしい!また、最後まで衰え知らずだった金管群の壮絶なハーモニーにも圧倒されました。
- ブラームス 新時代のドイツ風演奏とでもいうべき演奏。ドイツの重厚さと洗練さが共存していました。ここまで有名で名演も多い曲は、聴衆の耳も肥えていて、演奏するのも大変ですが、聴衆の反応も上々。よい演奏でした。
- ブルックナー 多少「こなれていない」部分も散見されましたが、非常に美しい演奏。「ヤンソンスのブルックナー」はあまりイメージがなく、どんな演奏か期待半分・不安半分だったのですが、いい意味で予想を裏切る演奏でした。他のブルックナー演奏が楽しみになりました。
そんなヤンソンス、今でこそ、ヨーロッパの主要オーケストラのポストを2つも持つ「時の人」ですが(フランスの音楽誌のランキングでは、ロイヤルコンセルトヘボウは2位・バイエルン放送響は6位)、キャリアは晩成型です。
カラヤンに師事し、ムラヴィンスキーの副指揮者を永年務め、80年代には次代担う指揮者候補として挙げられた時期もありましたが、いわゆるメジャーオーケストラからはポストのお声がかからず、下積み(といったら失礼かな?)を続けました。
1979年から21年間に渡り、国際的にはいまひとつだったオスロフィルのレベルアップに尽力するなど、華やかとは言いがたい活動を地道に続けます(オスロフィル時代の演奏はEMIに数多く残されています)。
21世紀に入ってようやくバイエルン放送交響楽団の地位を得ます(ロイヤルコンセルトヘボウは翌年)。このときすでに60歳。ちなみにベルリンフィルの地位を、カラヤンは47歳で、アバドは57歳、ラトルは47歳で得ています。
華やかさの裏には、気の遠くなるような地道な努力があるのでしょう。
彼の音楽からにじみ出る、人間的な温かさ、さらには楽団員・聴衆に対して最大限の敬意を払う姿は、努力の量に比例しているような気がしました。
(ながの)