あなたは「心配症」ですか?


あなたは、将来に不安を抱えてますか?くよくよと細かいことが気になりますか?


もしそうだったら、大変結構です!心配症でいいんですよ。


実は、心配症であることは成功のひとつの条件なのです。私は、以前からキャリアデザインにおける基本姿勢のひとつとして「健全な危機意識」の必要性を訴えていますが、この言葉はひらたく言うと「心配症」ということです。




実は、最近聞いた何人かの成功者の話でもやはり重要なキーワードは「心配症」でした。



日本の喫茶店業界に革命をもたらした「ドトール」はもちろんご存知ですよね。


従来の喫茶店は、いわば場所貸し業です。ゆっくりとくつろげる代わりに、コーヒー代は300-500円位します。ホテルのカフェでは、雰囲気代もチャージされて一杯1,000円とかするところもありますね。一方、ちょっと一息のために気軽に立ち寄れ、安くておいしいコーヒーを飲める場所として登場したのが「ドトール」でした。1980年にデビューしたこの新業態は、たちまちビジネスパーソンを中心に大人気となりました。現在の国内店舗数は1000店舗以上に達しています。


さて、ドトールは、創業者の鳥場博道氏が1970年代にフランスに旅行に行ったことがきっかけでした。鳥場氏は、パリのカフェで、朝方、出勤前の人たちがカウンターでコーヒーを立ったまま飲んでいる光景に驚きました。聞くと、立ち飲みと椅子に座った場合で値段が違っていたのです。そして、鳥場氏は、この気軽に飲めるカフェのスタイルは日本でもきっと受けるはずだと直観したというわけです。


実はこの旅行は、喫茶店を経営する同業者の人々と一緒だったのですが、「ドトール」のような新業態を具現化したのは鳥場氏だけでした。なぜ、鳥場氏だけが直観できたのでしょうか。


それは、将来に対する不安がベースにあったようです。70年代といえばまだまだ従来型の喫茶店が流行っていた時期です。目先の経営にはなんの問題もありませんでした。しかし、鳥場氏はこのままの繁栄が長く続くはずはないと「心配」していたんですね。また、当時の喫茶店にはややいかがわしいイメージがつきまとっていたことも気になっていたそうです。


要するに、鳥場氏は従来の喫茶店経営の将来に対して不安で仕方がない「心配症」だったからこそ、同じものを見ても、他の人にはわからなかったビジネスチャンスを発見できたというわけです。



また、短期間で急成長した出版社、幻冬舎の社長、見城徹氏は、自分自身のことを「小さいことにくよくよする人間だ」と言っていますね。でも、「そうでなければ成功しない」とも付け加えています。


「Only the Paranoid Survive.」
−病的なほどの心配症の人間だけが生き残る


というのは、インテル創業者の一人、アンドリュー・グローブの座右の銘であり著書のタイトル(邦題は「インテル戦略転換」)です。将来に不安を感じている人だからこそ、現状に甘んじることなく常に生き残れそうな道を探し続ける。そして必要とあらば大胆な策が打てる。長期にわたる成功を収めている方に共通しているのはこういうことなのです。



ついでながら、TVドラマ「花より男子」で“花沢類”を演じた22歳の役者、小栗旬さんは今年大ブレークして、文字通り「今が旬」と言われていますね。あちこちから引っ張りだこの人気で休む暇もありません。さぞかし舞い上がっているんだろうなと思ってましたが、実はそうではありませんでした。


先日の「情熱大陸」で彼の密着取材の様子が放送されていましたが、「こんな人気が1年後も続いているはずはない」と、かなり冷めた目で自分を見ていました。もちろん目の前の仕事には全力でぶつかっています。それでも、現在の異常な人気に戸惑いを隠せず、ある意味で大きな不安を抱えているようです。彼も結構「心配症」なのかもしれませんね。しかし、実際に彼が「心配症」であったとしたなら、だからこそ、現在の人気に溺れることなく、地道な努力を欠かさず、役者として大成することができるんじゃないかと思います。


(キャリア・アドバイザー 松尾順)