トップ営業に学ぶ就職・転職活動の考え方
「サンプル百貨店」というWebサイトはご存知ですか?
このサイトの会員になると、様々な企業のサンプル(試供品)がもらえます。つまり、サンプルを配布したい企業と、サンプルを欲しい消費者をつなぐサービスを展開しているのが「サンプル百貨店」です。現在は、女性を中心に30万人もの会員を抱えて順調に事業を伸ばしています。
このサイトを企画・開発・運営するルーク19(株)の設立者は2人の女性です。代表取締役社長は渡辺明日香さん。同代表取締役副社長は飯島淳代さん。お2人は、「サンプル百貨店」を立ち上げる前は、外資系の大手英会話教材のトップ営業でした。お二人とも、年間販売実績ベースで全世界ナンバーワンになったことがあります。
この2人営業のプロが率いるルーク19ですから、言うまでもなく営業はお手のもの。当初、サンプルを配布したい企業にこの仕組みを提案するに当たっては、実際の店舗に並んでいる商品の裏に記載されているメーカーを調べ、片っ端から営業をかけていったそうです。
実は先日、渡辺さんのお話を聞く機会があったのですが、なるほどトップ営業の方は違うなと感じたことがありました。それは、非常にシンプルですが
「受け入れてくれる人に出会うまで続ける」
ということです。
具体的に渡辺さんのやり方をご紹介しましょう。
現在、「サンプル百貨店」でもらえるサンプルは宅配便で送ってきます。でも、この方法が採用しにくい商品があります。例えばアイスクリームなどは溶けないように保冷状態で送る必要があります。しかし、これだと配送料が割高になってしまいます。つまり、配送コストがネックでサンプル配布ができないケースがあるのだそうです。
そこで配送コストをなんとかできないかと考え出されたのが、引換券のついたハガキを希望者に郵送し、コンビニやドラッグストアで現品と交換できる新しいサービスです。
このサービスを実現するためには、コンビニやドラッグストアの協力を仰がなければなりませんが、同社のように、まだまだ無名のネットベンチャーだと、話を聞いてもらう以前に門前払いされます。
しかし、渡辺さんたちの思考・行動は違っていました。同じ会社でも、何度でも電話をかけなおせば別の方が出ることがある。この新しいサービスに関心を示してくれる人にぶつかるまで電話をかけ続ければいい。これがプロの営業のアプローチなのです。
実際、こうしてコンビニ最大手の中に話を聞いてくれる人を見つけ出し、最終的に同社と大手コンビニとの事業協力関係が成立しました。大手を落とせば他の企業も簡単に追随しますから、その後の営業は楽だったようです。
営業として成功する人の共通点を探ると、営業をかけていた人に断られたからといっていちいち落ち込まないことがわかります。自分や商品が否定されたわけではなく、それは単にその商品を必要としていなかった、話を聞いてくれる人でなかっただけ、とすぐさま頭を切り替えて新しい営業先に向かう。
営業マンとして当然備えておくべき商品知識やコミュニケーションスキルは重要ですが、商談が成立しなかったからといって必要以上に自分を責めたりしない。非常に簡単な話ですが、「買ってくれる客と出会うまであきらめずに営業を続けることが「成功のカギ」のようです。
こうした考え方は、やはり同様に英会話教材でトップ営業だった和田裕美さんもおっしゃっていました。
和田さんは、営業の場面以外でも、就職・転職の際、すんなりと就職・転職先が決まる人もいるけれども、何社も落ち続ける人もいるという例を挙げていました。私にも経験がありますが、採用不可が続くと「自分は社会に必要とされていない人間なのか・・・」などと考えて絶望的な気分になってきます。
でも、本来はそんなに落ち込む必要はありません。トランプのカードを引き続けていいると、いつかは必ず「ハートのA」が出てきますが、幸運にも1枚目で引く人も、逆に50枚目にやっと引く人もいる。つまり、就職・転職活動についても、相性のいい会社との出会いが早いか・遅いかというタイミングの問題なのです。
もちろん、ビジネスパーソンとして自分の価値を高めるための努力は惜しんではいけませんよ。自分はどんな仕事をやりたいのか、どんなスキルを持っているのかといった冷静な自己分析、そして入社を希望する企業の研究も必要です。
しかし、こうしたやるべきことをやっているという自負があるのなら、「就職・転職活動でうまくいかないのは、単に、自分にふさわしい会社との出会いが遅くなっているだけだ」と考えればいいのです。ついでながら、ここで「会社」を「恋人」と差し替えた場合も同じことが言えます(笑)。